どんなジャンルの調理師・料理人でもコックコートはほとんど白を着用しています。

なぜ料理人のコックコートは白なのか。一番の理由は、衛生管理と清潔感が重要視されているからです。
白は汚れが目立ちやすく、常にきれいにしておこうという意識を保てる色です。
利用客の側からしても、真っ白いコックコートの料理人が作っていると、料理もおいしく感じるものです。

手さばきの良い料理人はコックコートが汚れていない…そんなイメージもありますが、
下積み時代とでは任される内容が違うので、
下ごしらえや掃除などが増えるとコックコートも汚れやすくなるものです。

【参考記事】清潔感重視!コックコートのカビへの対処法はこちら▽

コックコートは油汚れがつきやすい

火も油も使わない料理だけであればコックコートが汚れる機会は少なく、
汚れても洗濯で簡単に落としやすいのですが、実際の飲食店ではそんな風にはいかないものです。
とくに「焼く」「揚げる」の工程がある料理をすると、
目に見えない油の飛び跳ねがコックコートに蓄積されていきます。
油だけでなく、調味料を含んだ状態の汚れとなりますから汚れの色も濃くなり、
落ちにくい油汚れとなってこびりついていくのが難点です。

調理中だけでなく食器洗いや清掃の際、
油を交換する際などコックコートは常に汚れのリスクと直面しています。
また、コックコートは火を扱う料理人が高音の油の跳ね返りなどで火傷をしないように
厚手の生地で仕立ててあるため、
一度ついた汚れが繊維の奥に入り込んで余計に落としにくいという問題もあります。
毎日洗濯しているのに日に日にコックコートの汚れが増えいく…
と感じることがあるのはこのためです。

油汚れにも種類がある

また、原因が植物由来の油脂か、
動物由来の油脂かで油汚れの性質も変わってきます。
動物の体内に多く含まれている油(バター、ラード、ヘットなど)は
常温では白く固まる種類の脂です。
一方、植物性の油(菜種油、オリーブオイル、ごま油、ココナッツオイルなど)は
常温でも固まりにくい性質を持っています。
こうした油の性質の違いは摂取したときの人体に与える栄養価や影響だけでなく、
汚れとしても別の性質を示します。
動物性油脂の油汚れと植物性油脂の油汚れには、
それぞれに適した落とし方があります。

白衣の油汚れ落としに使う道具、洗剤

コックコートに白さを取り戻したい時にはハイターなどの漂白剤が有効ですが、
調理の油汚れを落とすことに関しては、漂白剤はあまり活躍しません。
それは油汚れの性質が調理時の温度と関係しているからです。
焼く、揚げるなどの工程を経ている時は、かなりの高温で油が飛び跳ねています。
そのような油汚れを落とす際には、
高温のお湯で洗濯することがポイント
になります。

コックコートの油汚れを徹底的に落とす方法

用意するもの

・作業着用洗剤
・粉末タイプの酸素系漂白剤
酸性である油汚れを落とすのに相性が良いのは弱アルカリ性の洗剤です。
手洗いをするとさらに有効なので、洗濯用固形石鹸もあれば準備しておきましょう。

・加熱できる鍋やボウル(洗濯桶として使用)
コックコートが綿100%であれば「煮洗い」といって、煮沸しながら洗うこともできます。
大きめのホウロウかステンレスの鍋、
または熱湯を注いでも大丈夫な材質のボウルや桶などを準備してください。

熱湯でのつけおき洗いの際は湯温がなかなか下がらないので、
火傷をしないよう充分に注意してください。
洗濯が済んだらすぐに片づけたいでしょうが、安全のためにそのまま一晩おいて、
翌日すっかり温度が下がった状態で片づけることをおすすめします。

煮洗いでコックコートの油汚れを落とす手順

1.熱湯に洗剤を溶かしたものを用意する

お湯を鍋あるいは桶に用意します。あとでコックコートを入れるので、
お湯をたっぷり入れるとあふれますから適量に抑えてください。

水と油は交わらないのと同じ要領で、油汚れの洗濯にはお湯が必須です。
60~70度ぐらいの高温のお湯が最適ですが、この温度は当然、触ると火傷するほどの熱さです。
決して素手でかき混ぜないこと、
またお湯がはねるほどの勢いをつけないこと
を常に心がけてください。

洗剤の割合は、パッケージに表記されている、つけおき洗いの基準値で問題ありません。
普段の洗濯よりはかなり濃度は高くなります。

2.コックコートを熱湯に浸す

洗い桶の熱湯にコックコートを浸します。
コックコートは厚手の生地でかなり水分を吸うので、ゆっくりと沈めるイメージで入れましょう。
お湯が染み込んでいない部分の汚れは落ちませんから、全体をたっぷり浸してください。
持ち手まで熱の伝わらない棒状のものがあると便利です。
そしてお湯が冷めるまで待ちます。

3.油汚れの落ち具合を確認し、気になる所を固形石鹸で揉み洗いする

お湯が十分に冷めたらコックコートを取り出し、全体の汚れの落ち具合を確認します。
繊維に入り込んだ頑固な油汚れを見つけたら、固形石鹸を直につけて、揉み洗いします。

4.お湯を使って洗濯機で丸洗いする

洗濯機で丸洗いして仕上げます。
このときもできるだけお湯を足して
40度以上(お風呂のお湯より少し熱いくらい)の水温で洗濯すると効果的です。
※ただし40度前後のお湯での使用に適した洗濯機であるかを事前に確認してください。
無理であれば、お湯でしっかりすすいだあとに通常通りに洗濯してください。

コックコートを煮洗いする際の注意点

長年の使用で蓄積した油汚れは、一度の煮洗いではなかなか落ちません。
ただ、煮洗いは油汚れを強く落とせる一方、高温で繊維を傷めやすいという問題もあります。

コックコートは高い耐久性を備えた素材で作られていますが、
100度を超える高温にさらされてから急激に温度が下がると繊維が膨張と収縮を繰り返すことになり、
寿命が縮まることが考えられます。
着用のたびに毎回煮洗いをするのはおすすめできません。

また、これだけの手間を毎日のように繰り返すのは現実的には難しいでしょう。
油汚れを落とすには体温よりも高い温度での洗濯が適していますので、
入浴後すぐの残り湯で気になる汚れ部分を固形石鹸で揉み洗いしておくだけでも、
そのまま洗濯機で洗うより簡単に汚れが落ちやすくなります。

コックコートをきれいに洗える洗剤

・作業着用洗剤

建設現場や機械業に従事する人に向けた作業着用洗剤ですが、
機械油などと各種の油汚れに威力を発揮するので、コックコートの洗濯にも適しています。
NSファーファ・ジャパン株式会社から発売されている
「WORKERS(ワーカーズ)」というプロに向けた作業着用洗剤は人気です。

・セスキ炭酸ソーダ

重曹よりも高いアルカリ性の性質を持つ白い粉末で、
人体に害を与えないことからキッチンや魚焼き器などのしつこい油汚れにも効果が高いと
注目を集めています。
洗剤を溶かす際も手荒れが起こらないので素手で洗濯物を触っても問題ありません。
界面活性剤が入っていないことから生活排水に流しても
環境汚染にならず、地球にやさしい洗剤です。
ドラッグストアやスーパー、100円ショップなどでも販売されており、手軽に入手できます。

・洗濯用固形石鹸

子供の泥汚れや皮脂汚れを落とすのに適している固形石鹸は、
調理場で受ける油汚れにも対応できます。
繊維に直接擦り込んで揉み洗いをするだけで、
通常の洗濯よりも格段に汚れが落ちるのを実感できます。
50年以上の歴史がある薄い緑の固形の石鹸「ウタマロせっけん」は長く好評を集めています。

これらの洗剤を使い分けて、高めの温度のお湯で洗濯すれば、頑固な油汚れは次第に薄れ、
真っ白なコックコートを毎日着られるようになるでしょう。
乾燥させる時も、乾燥室があれば高温かつ短時間で乾燥させるのが
カビの繁殖を防ぐことになりますが、
ない場合も天日干しで日光の殺菌力を利用するのも良いでしょう。

コックコートの油汚れは高温のお湯と油汚れ向きの洗剤で落とす

洗濯用洗剤や漂白剤ではなかなか落ちなかったコックコートの油汚れを落とすには、
洗剤の性質と水の温度がポイントになります。
できるだけ高い温度のお湯で、
油汚れを落とすのに適した洗剤を使って洗えばコックコートの油汚れもすっきり落とせます。
落としにくい家庭用のエプロンやキッチンマットの汚れを落とすのにも応用できます。

なお、油汚れ以外の汚れ、たとえば調味料などの汚れや汗による黄ばみには漂白剤が効果的です。
洗う前に、どちらの汚れが多いのか、今回はどちらを落とそうか…と
汚れの性質を見極め、狙いを絞って汚れを落としましょう。

おいしいお料理は、整った環境と清潔な衣類に身を包んで、気持ちよく仕上げたいですね。
コックコートの清潔感がお客様の信頼感を得ることにも繋がり、
お店の評判が上がるチャンスにもなります。
正しいお手入れの方法を知っておけば、もうコックコートの油汚れも怖くありません。

【参考記事】コックコートって実際どんなものなの?料理人志望は必見!▽