医師、看護士の制服といえば真っ先に想像するのが白衣。
しかし、昨今の白衣は必ずしも「白い衣服」ではなくなっています。

「なぜ、白が医療現場に選ばれたか」
「その起源は何だったか」
「なぜ緑や青のユニホームが登場したか」など

「白衣はなぜ白いのか」について考察します。

【参考記事】医療ユニフォームの中の白以外の効果も要チェック!▽

医療現場の白衣が与える色の印象

医師・看護士の白衣の白い色には多くの人が共通したイメージ、
「医療現場らしいイメージ」を受けるでしょう。

白衣の白から得られるイメージ

  • 清潔感:真っ白な白衣からは明るく清潔な印象を受け、衛生面への配慮も伝わってきます。
  • 信頼感:白は信頼感を与える色です。白衣から「医療のプロ」への信頼を感じる人も多いでしょう。
  • 威厳:専門的知識をもつ医療従事者の発言に納得させられるのは、白衣の白の影響も手伝っています。
  • 明るさ、広がり:整頓されて広々とした病院のイメージと医師の白衣はよくなじんでいます。
  • 冷たい印象:ときどき「医師は薄情だ」と言われるのは、白衣の白の影響もありそうです。

とくに強いのは白の清潔感あふれるイメージでしょう。
医師、看護士だけでなく病院のイメージも白、という方も多いかもしれません。
すべてがポジティブなイメージではありませんが、白い色が与える印象と、
医療白衣の白とは密接な結びつきがあるのは確かです。

医療現場の制服にはいつごろから、どのような理由で白が定着したのでしょうか。

医療の白衣の起源と歴史

まずは白衣の起源を探るため、医学の歴史に軽く触れてみましょう。

最古の起源? 紀元前のインドの医師の衣

古くは紀元前のインドで、医師は清潔であることを義務づけられ、
その一環として白い衣をまとうことになっていました。
衛生への配慮として白い衣が選ばれたことは、現代の白衣との興味深い共通項です。

ただし、現代医学と地続きである西洋医学の現場に白衣が登場するのは紀元前どころかごく最近、
わずか百余年前のことです。

西洋医学での白衣着用は19世紀末ごろから

19世紀の西洋の医師は、もっぱら黒いコートを着用していました。
黒は礼服の色であり、神聖なる医療の現場にもふさわしい色である、と考えられていたためです。
衛生管理よりも儀礼的な慣習が優先された結果とも考えられます。
ただ、これは医療現場ばかりを責められることではありません。

当時は一般に公衆衛生への理解がほとんどなく、
「不衛生が原因で病気が流行する」ということすら理解されていませんでした。
病院も調理場も、マメに掃除する習慣はありませんでした。

衛生概念が重視されるとともに白衣が登場

そして19世紀半ばごろから医術は科学としての性質を強く帯びて急成長を遂げ
医学と呼ぶにふさわしいものになりました。

現在に通ずる衛生の概念はこの時期に「初めて生まれた」と言っても大袈裟ではありません。
医師が手を洗うようになったのも、ようやくこの頃からだったというのですから驚きです。

衛生管理の重要性が認められたのと時を同じくして、医療現場での衣服も変革します。
19世紀末ごろ、医師たちはそれまでの黒いコートを脱ぎ捨て、白衣を着るようになりました。
参考:栗原宏 「医師の身だしなみに関する研究 : 患者視点と医学生視点の比較・検討」(2014)

看護士の白衣の歴史

看護士が白衣を着るまでの歴史は、医師のそれとは少し歩みが異なります。
中世のヨーロッパで看護婦を務めたのは修道女でした。
看護婦という職業と宗教との密接なつながりは、
「看護婦は病院の召使」という職業蔑視的見解とともに19世紀まで長く続きました。

これを改革したのがイギリスの“クリミアの白衣の天使”、ナイチンゲールです。
フローレンス・ナイチンゲール(1820-1910)は1854年に勃発したクリミア戦争に看護婦として従軍し、
2年後に帰国すると統計学的根拠を基に医療現場に衛生改革をもたらしました。
そして初めての宗教系ではない看護学校、ナイチンゲール看護学校を設立し
「看護は専門的教育を要する立派な職業である」と世間に認めさせました。

ナイチンゲールの時代の看護婦はワンピースに白いエプロン、そしてナースキャップという服装でした。
のちに女性看護士が白いワンピースを着るようになったのは
白いエプロン+ワンピースという組み合わせの影響もあるかもしれません。

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白の弱点が判明し、「白くない白衣」が登場

医学の歴史では衛生管理の重要性が理解されるのと同時に、
医療用の衣服の色に「白」が選ばれていました。
清潔感を与える色であり、衛生管理しやすいことが最大の理由でしょう。


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手術の特性から「白い白衣」の問題点が判明

さて、昨今の医療現場では白以外の色の白衣を着た医療従事者を多く見かけます。
衛生を象徴する白が一部姿を消したのは、決して衛生管理が軽視された結果ではありません。

白い白衣には、ひとつ弱点があったのです。

補色残像

現在、医師や看護士が手術着に白い白衣を選ぶことはまずありません。
これは「補色残像」への配慮が理由です。

補色とは、色相環で反対の位置にある色のことです。
ざっと「逆の色、反対の色」と理解してもよいでしょう。
緑色の補色は赤紫色で、青なら黄色、赤なら青緑色が相当します。

そして残像とはすでに消えた色や光、映像などが視覚に残って見える現象のことです。
そして補色残像とは「特定の色を見続けたあとにその色が消えると、
補色が残像として見える現象」
を指します。

手術の際は血液のあざやかな赤色を長く見続けるため、
視線を動かすと赤の補色である緑色の残像が現われます。
手術中も手術後も、医師の目から血液の赤色の補色残像である緑色が消えず、
業務に支障をきたす
ことが問題になりました。

そこで赤の補色である青や緑色をあらかじめ周囲に配したところ、補色残像の緩和が確認できたため、
手術室の壁やカーテン、そして手術着にも緑色や青色が積極的に採用されるようになりました。
こうして、ほとんどの手術室から白い白衣が姿を消すことになったのです。


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他色の白衣も求められ、活躍する現在

現在、医療現場では(手術室以外でも)真っ白ではない白衣が増えています。
衛生管理の必要性から白い白衣が医療現場に定着しましたが、
現代は白にこだわらずとも衛生管理は可能な時代です。

洗濯の技術も進歩して、白衣やシーツ類の洗濯を外部に委託する医療施設も多くあり、
「洗う手間を惜しんで白衣を着続ける」ということはまずありません。

白の冷たいイメージを避けての他色採用も

白い白衣にこだわる必要がなくなり、さまざまな理由で他色の白衣を採用するシーンが増えてきました。

白い色には「冷たい、無機質」という印象もありました。
実際に白衣、そして医師に対して「怖い」「冷たい」という印象をもつ患者も少なくありませんでした。
また、「患者の印象を配慮して色を変える」という考えは白衣のみではなく
「病院の内装、壁にも白以外の色を」という取り組みも多くあり、
実践されて好評を得たという背景もあったことでしょう。

とくに小児科に属する医療従事者から「あたたかい、やさしい印象の白衣を」との声が強く、
暖色・淡色を中心に白以外の色の白衣が採用されるようになりました。


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看護士の制服も、デザインとともに色のバリエーションは増えています。

女性医師が多くなったのと同様に男性看護士の数も増えていますが、
そのために看護士用の制服デザインが均一化することはなく、
むしろ女性看護士向けのもの、やわらかな印象を与える工夫を凝らしたデザインの白衣や、
それに合ったカラー展開のものが増えています。


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「白の白衣を」という根強い人気も

一方で、「やはり白い白衣を選びたい」という需要も根強くあります。
「医師は白い白衣」というイメージから離れるのは惜しい、
スタッフ数が多くカラフルにすると混乱を招く、などの事情を考慮してのことでしょう。

ただ、その中にも「すべて真っ白ではないものを」「着る人ごとの自由度を多少はもたせたい」
といった細かい需要に応えて、白を基調に差し色でアクセントをつけたもの、
差し色で複数種類ラインアップしたものなどが登場し、
白い白衣の中にもバリエーションが増えています。


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既存のオーソドックスな白衣の需要も残る

また、病院・クリニックから少し離れた場所では「医療従事者=白衣」というイメージを上手に活用して、
やはり白い白衣が選ばれています。

たとえば薬剤師や検査技師、研究者は職場の制服として、
ドクターコートと呼ばれる白いロングタイプの白衣をよく着用しています。


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医療白衣は白も他色もそれぞれ強い人気

制服は印象を左右します。医療現場での白衣の白さは
医師・看護士が清潔感や信頼感を印象づけるために大きく貢献します。

イメージだけの話ではありません。
医療現場の制服が白くなったのは衛生面の重要性が認められたのと同時期でした。
清潔に、衛生的に保てる色である白が選ばれたのは必然でもありました。

現在では、白以外の白衣も増えています。
手術時に起こる補色残像の問題を軽減できるよう手術着には青や緑の白衣が選ばれていますし、
また「目にやさしく、安心感を与える」などの理由で
淡色系の色の白衣を積極的に採用する医療機関も増えています。
それぞれの色のメリットを理解して採用し、
長所をうまく活用することが求められるでしょう。

少なくとも「白衣は白でなければ」と固定概念にとらわれる必要はないのかもしれません。
「白衣の天使」ナイチンゲールの看護学校の制服も茶色だったというのですから。

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