安全靴の強度(=安全性)には2つの規格があります。
乗用車が足に乗るかもしれない現場とペットボトル飲料が落下するかもしれない現場とでは、
求められる安全性の程度が変わります。

安全靴の規格である、JISJSAAの違いを知り、
必要な安全性を確保する基準を把握しましょう。

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JIS規格を満たす靴だけを「安全靴」と呼ぶ

安全靴、と言うと「ケガを防ぐためにつま先や靴底に保護材が入った作業用の靴」
といったイメージでとらえている方もいらっしゃることでしょう。
これは「安全靴」という言葉が一般名詞のように広まっているだけで、正確ではありません。

厳密には「安全靴」と呼べるのはJIS規格を満たした靴だけです。

JIS規格と安全靴

JIS(Japanese Industrial Standards、日本工業規格)とは、
日本国内の工業製品について定められた規格です。
わたしたちの身の回りにあるたくさんのものがJIS規格によって定められています。
製品の規格は非常に重要であり、同時に身近なものです。
たとえば単三乾電池が必要になったとき、長さ・太さの違いなどを気にせず購入して使用できるのも、
規格がきっちりと定められているおかげです。

JIS規格では、安全靴について
つま先を保護する先芯があり、靴底に滑り止めを備えた靴と定義しています。

そして安全靴に必要な基本性能に対してそれぞれ強度を定め、
検査をパスしたものだけを「JIS規格を満たした安全靴である」と認めています。

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安全靴に求められる性能

安全靴の基本性能

安全靴については、JIS規格のうち「JIS T 8101」において規定されています。
3つの基本性能を満たしたものだけを「安全靴」と呼ぶことができます。

3つの基本性能

  • 耐衝撃性能:つま先に重量物が落ちても、規定以上の隙間を確保して(つぶれずに)つま先を守れる
  • 耐圧迫性能:つま先に重量物が押しつけられても、規定以上の隙間を確保してつま先を守れる
  • 表底のはく離抵抗:靴の表底と甲被の接着強度が充分で、強い力で引っ張っても剥がれない

作業程度による3区分

なお、基本性能については、重作業用(記号H)、普通作業用(記号S)、
軽作業用(記号L)の3つの区分に分けて規定されています。

たとえば耐圧迫性能なら、
「先芯にもし乗っても隙間を確保できる(=つぶれない)重さ」は重作業用・Hでおよそセダン1台分、
普通作業用・Sでリッターカー1台分、軽作業用・Lで軽自動車0.5台分、となっています。
従事する作業内容にあわせて、3区分から適したものを選ぶ必要があります

安全靴の付加性能

基本性能以外にも、作業場の特性や作業内容に合わせて性能が付加されることがあります。
このうち、JIS規格では以下の性能に基準を設けています。

さまざまな作業員の作業靴イメージ

付加性能

  • 漏れ防止性能:総ゴム製の安全靴で、水に浸けても水が靴の内側に染み込まない
  • 耐踏抜き性:鋭利な釘などを踏んでも表底を貫通せず、足裏をケガするのを防げる
  • かかと部分の衝撃エネルギー吸収性:かかとにかかる衝撃を分散し、足への負担を軽減できる
  • 足甲プロテクタの耐衝撃性:先芯でカバーできない足の甲部分をプロテクターで覆い、
    落下物の衝撃から守れる
  • 耐滑性:靴底が水分や油分でも滑りにくく、転倒事故を防げる

参考:安全靴の性能|安全靴とは|日本安全靴工業会

安全靴の素材、甲被と表底

安全靴には性能以外にも規定があります。主なものを確認しましょう。

安全靴の素材

安全靴の甲被(こうひ、アッパー部分)の素材は大きく分けて2種類です。
なお、それぞれの厚みや性能についても基準が設けられています。

  • 総ゴム製:耐油性のものと、そうでないものの2種類に分かれる
  • 天然の牛なめし皮

表底の素材と規定

表底(靴の裏、接地する底面のこと)はゴム、発泡ポリウレタン、
あるいはこれらを組み合わせた構造であり、
また滑り止め効果のある形状をしている必要があります。
薄すぎると安全性を損ねるため、最も薄い部分の厚みも定められています。

JIS規格を満たさない作業用の靴は?

さて、ここまで確認して「自分が使用している作業用の靴は安全靴ではないが、
同様の安全配慮がなされたものだ」
と気づいた方もいらっしゃることでしょう。

安全靴はかなりの強度を誇り、事故が起こっても被害をかなり抑えられます。
ただ、作業の性質上、安全靴が保証するまでの強度は必要ない現場もあります。
安全靴よりは強度は抑えられているものの、
その代わりに履きやすさや動きやすさを追求した作業靴は多くありますし、
それらの安全性を確認するための、JIS規格とは別の規格も存在します。

プロテクティブスニーカーとJSAA規格

海外でも安全確保のために先芯を備えた作業用スニーカーが広く普及しています。

「つま先は守りたいが安全靴ほどの強度は必要ない」「動く機会が多い作業なので軽さが欲しい」
といった需要
もあって、海外製作業用スニーカーが多く輸入され、
また国内でも生産されるようになって、業界としての規格が求められるようになりました。

このような作業靴を「プロテクティブスニーカー」と呼び、
プロテクティブスニーカーの安全性は「JSAA規格」によって定められています。

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プロテクティブスニーカーの特徴と安全性

プロテクティブスニーカーは、その名の通りスニーカータイプの外観・構造をしているもの、
あるいはブーツタイプの「プロテクティブブーツ」の2種類に分かれます。

JIS規格と比較対照しやすいよう、規格の一部をご紹介します。

甲被の素材

革、合成皮革、人工皮革、プラスチック、ゴム、編み物

作業区分

普通作業用、軽作業用

先芯素材

金属、硬質樹脂

基本性能

耐圧迫性能、耐衝撃性能、表底のはく離抵抗

付加性能

漏れ防止性能(※ブーツのみ)、耐踏抜き性、かかと部分の衝撃エネルギー吸収性、耐滑性など
参考:プロテクティブスニーカー規格 – 公益社団法人 日本保安用品協会

安全靴とプロテクティブスニーカーの違いは「優劣」ではない

 

基本性能 付加性能 メリット・デメリット
(両者比較)
安全靴 (※ブーツのみ)耐衝撃性能
耐圧迫性能
表底のはく離抵抗
漏れ防止性能
耐踏抜き性
かかと部分の衝撃エネルギー吸収性
足甲プロテクタの耐衝撃性
耐滑性
メリット:安全性が高い
デメリット:運動性が低い
プロテクティブ
スニーカー
耐衝撃性能
耐圧迫性能
表底のはく離抵抗
漏れ防止性能(※ブーツのみ)
耐踏抜き性
かかと部分の衝撃エネルギー吸収性
耐滑性 など
メリット:運動性高い
デメリット:安全性が低い

 

プロテクティブスニーカーの基本性能、付加性能は安全靴の項目と共通していますが、
強度の劣る素材の使用を許容している関係もあり、全体に性能を表す数値は安全靴より抑えられています。

ただ、「だからプロテクティブスニーカーは安全靴より劣る」
というわけではありません。

安全靴は安全性の追求の結果、重量がかなりあり、着用時の運動性はどうしても下がります。
また素材を限定して防水性能を高めたことから蒸れやすく、快適性が低下し、
また衛生管理面で不便である点は否めません。

ざっと言いますと、
「安全靴ならばケガをせず済んだ状況で、プロテクティブスニーカーは破損してしまうかもしれない」
「プロテクティブスニーカーで機敏な動きをしながら迅速に作業を終えられた場面だが、
安全靴ならば動きづらく、時間がかかったかもしれない」といったことが考えられます。
製品の特性の違いであり、どちらも一長一短の部分がありますから、
どちらが優れているか、と考えるべきものではありません

そのため、自分の作業に必要なもの・適したものを選ぶのが正解です。
タイヤ交換をする作業員の靴もとイメージ
現場や企業によっては「JIS規格の安全靴を必ず選ぶこと」
「JSAA規格のプロテクティブスニーカーあるいはプロテクティブブーツを使用すること」
といった内規がある可能性もあります。

業務の内容・性質がどのようなものか、そのためにどの程度の危険に備えなければならないかを確認し、
安全靴とプロテクティブスニーカーのいずれが適しているのか、必要なのかを判断しましょう。

また、購入時はJIS規格、JSAA規格のいずれかをクリアしているものであることを確認すれば、
信頼して使える、自分の身を適切に守る作業靴を手に入れることができます。

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