安全靴(セーフティシューズ)はつま先や足裏をガードする素材を組み込んでいるため、
どうしても蒸れやすく、また現場での力仕事という使用条件から不快な臭いの元になりがちです。
安全靴の嫌な臭いの原因とその解消法・臭い予防法をご案内します。
このページの目次
なぜ安全靴は臭いの元になるのか
まずは安全靴に限定せず「靴が臭くなる原因」をおさらいしましょう。
靴が臭くなる原因は雑菌の繁殖
靴の悪臭の正体は雑菌(バクテリア)の臭い、
少し詳しく言うと
「汗や垢・温度・湿度が原因で繁殖した雑菌が発する臭い」です。
足や靴の臭いを様々な視点から検証、研究した論文にもその旨が記されています。
人体は100種以上の微生物が存在するといわれ、皮膚にも多くの常在菌が存在する。
皮膚常在菌は、通常は人体にとって必ずしも害を与えるものではなく、
外部からの菌が進入しないようにバリケードを形成したりして有益な働きをする。
一方、常在菌の増殖は汗成分を分解し悪臭を引き起こす。
―引用:岩崎房子(文化女子大学短期大学部服装学科 教授)
「足の温熱生理機能と靴内微生物汚れの実態について」
雑菌を繁殖させる3条件
1.汗や垢
「汗臭い」とよく言いますが、実は汗はほぼ無臭です。
汗が問題になる理由は先の論文の指摘どおり、
皮膚の常在菌が汗や垢など人間の身体から出るものを「エサ」として
分解することで臭いの元になるからです。
2.温度
雑菌は35~42度くらい、やや温度が高いところで増えやすい性質があります。
3.湿度
湿度(水分)も雑菌繁殖の原因です。
夏に臭いやカビの害が多いのは高温・多湿と2つの条件が揃うためです。
安全靴と雑菌繁殖3条件の関係
安全靴と3つの条件との関係を確認すると、安全靴がいかに臭いの温床になりやすいかがわかります。
1.汗・垢と安全靴
足は「片足から1日にコップ1杯分の汗が出ている」とも言われるほど大量の汗をかいています。
それだけの汗や垢は靴下の外側にまで染み出るように広がります。
2.温度と安全靴
雑菌が繁殖する温度を聞いたとき「人間の体温に近い」とピンと来た方もいるかもしれません。
安全靴は保護材に覆われて密閉性が高く熱がこもりやすいため、
体温よりやや高めの35~42度に当てはまります。
3.湿度と安全靴
雨水や作業で発生する水、履く人の汗…と、安全靴は多くの水分に晒されます。
通気性が高く水分が乾きやすい素材の安全靴ももちろんありますが、
ブーツタイプのもの、先芯や踏み抜き防止靴底、
防滑性の高いソールを採用した安全靴は内部に水分がこもり、着用時間が長いほど湿度が上がります。
安全靴を履いて1時間もしないうちに靴の内部の湿度は100%にも達します。
雑菌を繁殖させない管理が重要
安全靴は履くたびに臭い発生の条件が揃ってしまうものです。
原因である雑菌を完全になくすことは実質不可能ですが、
雑菌を繁殖させない工夫をすれば悪臭の解消と予防はできます。
- 履く足
- 履く前後の安全靴のケア
- 安全靴購入時のコツ
これらを意識すれば、いつも臭い知らずの安全靴を快適に使用できます。
安全靴の臭い対策1:履く足の工夫
「安全靴を脱いだ後も足が臭う」「安全靴以外の靴も臭う」という場合、
靴よりも足が問題を抱えている可能性があります。
足を清潔にして解決しましょう。
足をていねいに洗う
足の指の隙間は汚れや水分が溜まりやすく、同時に洗いにくい部位です。
入浴時にボディタオルで足を撫でる程度で済ませず、隙間をひとつひとつ洗うと差が出ます。
角質ケアも効果的
足の裏や指の角質(硬くなった部分)も新陳代謝でやがて排出され、雑菌のエサになります。
軽石や角質ケア用グッズでときどき角質を処理すると雑菌のエサを減らせます。
足用の消臭剤を使う
足用の消臭スプレーは多数市販されています。自分が使いやすく、続けやすいものを選んでください。
自作できる消臭剤・ミョウバン水スプレー
足の消臭剤は、食品添加物として使われる「ミョウバン」で自作も可能です。
足の臭いはアンモニア等のアルカリ性の臭いです。
ミョウバンは水に溶けると弱酸性になる性質があるため、
足の肌に使用すればアルカリを中和して臭いを弱めます。
また雑菌は弱酸性の環境が苦手で繁殖力が極端に低下しますから、
ミョウバンスプレーの使用で雑菌の活動も抑制できます。
ミョウバン水スプレーの作り方
ミョウバンは薬局やスーパーで購入できます。結晶状の固体もありますが、
液状のミョウバン水をおすすめします。
作り方・使い方は簡単で、霧吹き容器にミョウバン水を20~50倍に薄めて入れ、足に噴霧するだけです。
慣れるまでは最も薄い50倍液を使用します。
肌荒れや炎症が起きたら使用を中止し、症状がなくなってから薄い濃度で再開しましょう。
抗菌・消臭の靴下や厚手の靴下を選ぶ
素足やストッキングでブーツを履くと汗が靴に付着しやすく、臭いを発生しやすいことはご存知でしょう。
汗をしっかり吸える綿素材で、厚みのある靴下を選べば臭い対策になります。
抗菌・消臭素材の靴下も効果的です。
安全靴の臭い対策2:安全靴のケア
靴の消臭グッズも多数あります。
湿度を抑えるものも検討し、気に入ったものを組み合わせて使うとよいでしょう。
安全靴に消臭スプレーを使う
靴の内部にスプレーを噴霧するタイプです。
雑菌と臭いの両方に作用するものを使うことで、悪臭の原因解消を期待できます。
ただし、
- 香りつきではない、無香料タイプを選ぶ
- 使用後に湿るものは履く前には使わない
この2点を心がけてください。
ミョウバンスプレーを安全靴にも使う
足の消臭法でご紹介したミョウバンスプレーは安全靴の消臭にも使えます。
ただし水分が多いですから履く前の使用は避け、充分乾くタイミングで使用してください。
抗菌・消臭中敷き(ソール)を入れる
抗菌グッズで雑菌による悪臭の予防効果を期待できます。
踏み抜き防止の安全靴は足裏への感触が固くて気になることも多いでしょうが、
中敷きを使えば履き心地も改善されます。
またソールを買い替えることで、多少住み着いた雑菌を追い払えます。
天日干しや乾燥剤で湿度対策を
使用しない日に安全靴を天日に干せば靴の内部がカラッと乾きます。
また乾燥剤を入れれば靴内部の湿度をコントロールできます。
下足入れは空気がこもって湿度が高くなりがちですので、
湿度がこもらない場所での管理、また下足入れの湿度対策も有効です。
安全靴を洗う
素材により方法は変わりますが、靴を洗うことは可能です。
一般的な靴の洗い方のいくつかを、先に参照した論文からご紹介します。
靴内の手入れ法としては、
①熱い濡れタオルで清拭する
②ドライヤーでよく乾燥させる
③消毒用アルコールで清拭する
④除菌・防臭スプレーの使用
などがあり、かなりの効果がある。
―引用:岩崎房子(文化女子大学短期大学部服装学科 教授)
「足の温熱生理機能と靴内微生物汚れの実態について」
内側の拭き取りならば時間もかかりませんし、毎日でも続けられそうです。
アルコールを含んだウェットティッシュを安全靴の保管場所近くに置き、拭き取る習慣をつけましょう。
安全靴の臭い対策3:安全靴購入時のコツ
臭い対策は安全靴の購入時点から始まります。
使用中のメンテナンスも大事ですが、安全靴を選ぶ際から消臭を意識しましょう。
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抗菌・消臭素材使用の安全靴を選ぶ
「安全靴は臭いが発生しやすい」という課題は当然メーカー側も把握しており、
臭いを発生させないよう工夫した安全靴を開発しています。
中敷きに抗菌・消臭素材を使用した安全靴、通気性の高い素材を使用した安全靴、
水洗いなど消臭のためのメンテナンスをしやすい安全靴など、対策手法は実に様々です。
購入時の条件に「悪臭が発生しにくい安全靴であること」を加えることで、効果的に臭いを予防できます。
通気性のよい形状、デザインの安全靴を選ぶ
膝上までのブーツタイプなど、構造上どうしても安全靴内部の湿気が外に逃げにくいものもあります。
ただ、フロントやサイドにジップを採用したものなら、
脱いだあとに広げておくことで空気がこもるのを緩和できます。
最も重要!安全靴を3足揃える
ここまでにご提案した臭い解消法・予防法とぜひ併用してほしいのが
「安全靴を買い足し、複数を併用すること」です。
安全靴の臭い対策の多くは、ある程度時間を置くことで効果が増します。
たとえば消臭スプレーを使って一日天日干しすれば、雑菌と湿度への対策が完了します。
もし1足しか安全靴を持っていなければ休日にしか天日干しはできませんが、
3足ほどを交代で履けば常に天日干しを経た安全靴を使用できます。
また、雨に降られて安全靴が湿った場合にも、
翌日別の安全靴を履けばその間に乾かせますから、湿度による雑菌繁殖を抑えられます。
複数買うと長持ちし、長期的にはコストを抑えられます。
安全靴一足を履きつぶしてからもう一足を買うよりも、
2足を揃えて交互に使うほうが倍以上長持ちします。
臭い対策と持ちの良さを考えて、3足用意することをおすすめします。
【参考記事】安全靴を買い足したい!選び方の基準とは?▽
清潔な足、メンテナンス、複数足揃えで安全靴の臭い対策を
安全靴はつま先への落下物や踏み抜きといったアクシデントの被害を抑えられる頼もしい装備品ですが、
密閉性が高く、履く人が汗をかく機会も多いために雑菌が安全靴の中で増殖しやすく、
不快な臭いを発生しやすいという問題があります。
- 足をていねいに洗い清潔に保つ
- 使用後の安全靴に消臭対策を施す
- 複数の安全靴を用意して臭い対策の効果を高める
これらを実践することで、安全靴の不快な臭いを減らし、また発生を予防できます。
安全靴からの臭いは「臭いがして不快だ」という問題にとどまりません。
雑菌の繁殖は足の健康にも影響するからです。
特に靴内は一般の被服と異なり、日常的にクリーニングを行なうことがないため、
靴内には蓄積された表皮剥離細胞の垢や汗成分の尿素が分解されるとpHが上昇し、
さらに靴着用時の高温多湿が影響して微生物の繁殖を助長し、足皮膚の衛生上、
健康上に問題を生じる。
―引用:岩崎房子(文化女子大学短期大学部服装学科 教授)
「足の温熱生理機能と靴内微生物汚れの実態について」
安全靴の不快な臭いは、足が雑菌繁殖により健康を損ねる前兆とも言えます。
臭いに気づく前に対策をとることで、安全靴の「雑菌を繁殖させやすい」というデメリットを避け、
「足を守る」というメリットだけを享受することができるでしょう。
【参考記事】ブーツタイプの安全靴を選ぶなら!▽